テアゲロthetwins-9-
ふぅ。
大野に覆いかぶさったまま、櫻井が体の力を抜く。
重てぇ!
大野が櫻井を押し返すと、櫻井の体は、大野の左側に仰向けになって沈んでいく。
繋がった部分が外れ、ダラリとしたそれを、櫻井が手早く処理する。
大野も両足を伸ばし、息をつくと、枕元の煙草に手をやる。
一本口に咥え、火を点け、ティッシュに包んだゴムを、
枕元のゴミ箱に捨てる櫻井に差し出す。
ほら、点けてやったぞ。
ん。
パクッとそれを咥え、大きく煙を吸う。
大野の隣にドサッと体を沈めると、灰が落ちないよう、顔だけ上に向ける。
珍しいね。が点けてくれるなんて。
頑張ったご褒美?
んなわけあるか。
大野は、もう一本口に咥え、火を点ける。
お前に頼みがある。確かめて欲しいんだ。
何を?
首を傾げる櫻井を横目に、大野が白い煙を吐き出した。
二宮さ〜ん!
事務所のドアが勢い良く開く。
どうしたんですか?
驚いた二宮が振り返ると、半べそを掻いた有岡が二宮に抱き着いた。
うわっ。ちょ、ちょっと!
母さんが今すぐ戻って来いって!
30年も音沙汰ない叔父さんが見つかるわけないって。
有岡は泣きながら二宮を見上げる。
どうしよう。
どうしようって言われても。
二宮は表情を変えず、有岡の腕を肩から外す。
仕方ないですよ。ここは恋人を連れて戻ればいいじゃないですか。
そんなことできません!
有岡はそれでも尚、二宮に抱き着こうとする。
それを遮るように、二宮は有岡の腕を掴む。
どうしてです?お母様に会わせて認めてもらえば?
今までのやり方がおかしい。
今はそんな時代じゃないって、言ってやればいいじゃないですか。
そんなこと言えます?
有岡は二宮の腕を返して、逆に二宮の腕を掴む。
言うしかないでしょう?
それができれば苦労しませんよ。
二宮は溜め息をついて、有岡を見つめる。
相手が男だから?
ギクッとした有岡は、目を瞠って二宮を見る。
どうして。
わかりますよ。
でも、最近じゃ、そういうのも市民権を得てます。
ここは自信を持って、相手を連れて行けば。
で、できません。
どうして?
二宮が首を傾げると、有岡がつぶやく。
あいつ仕事してないんです。
仕事してない?ヒモ?
有岡は困ったように笑って、小さくうなずく。
二宮は深い溜め息を着き、腕を外すと、ガシッと有岡の肩を掴む。
悪いことは言わない実家に帰って家を継げ。
二宮の射るような視線が有岡に突き刺さる。
嫌なんですってば〜!
有岡の叫びに、マイガールにいた相葉が、ん?と天井を見上げた。
仕方なく、有岡を宥めるように応接室のソファーに座らせる。
ご依頼の叔父さんは見つかりました。
え。
有岡の顔がパァーッと華やぐ。
ですが、叔父さんにまだお話はできていません。
どうなさいますか?ご自身でお話しますか?
それとも私共からお話しましょうか?
あそうですね。
やんわりと実家に顔を出すように促してみてもらえませんか?
いきなり甥が現れても。
俺、会ったことないし。
有岡は居心地悪そうに体をもぞもぞさせる。
それより。二宮さんどうして俺の付き合ってる奴が
男だってわかったんです?
二宮さんも。
違います。
二宮がきっぱり言い切る。
私は好きになれば男でも女でも構いませんが。
好きになればの話です。
決してそっちなわけじゃありません。
お、俺も同じです!なぜか初めて男を好きになっちゃって。
お金もないし、すっごくいい男ってわけじゃないけど。
好きなんです。
だったら、なおさら、実家にお連れすれば?
でもわからないんです。
二宮は不穏なものを感じ、腰の位置をずらす。
何が?
二宮さんに会ったら。
両足に体重を掛け、いつでも立ち上がれる姿勢を取る。
二宮さんもいいなぁって!
有岡は言うが早いか、二宮に抱き着く。
すかさず身をかわす二宮。
有岡の腕が空を切る。
二宮さん!
断る!
おかしいんです。男はあいつだけのはずなのに。
有岡が切なそうな顔で二宮を見つめる。
簡単なことです。
二宮は後ろ向きのまま、応接室のドアを開ける。
目覚めちゃったってことです!
身を翻すようにドアの外に出ると、勢いよく閉める。
バタンと音が響いて、マイガールにいる相葉が、また、ん?と天井を見上げた。